信用創造って何なのか理解するために「Suicaカード」を例に引いて考えてみよう。
今日「Suicaカード」に持っているポイント残高は現金と同額の価値がある。不安だから「Suicaカード」は持たないという人がいれば変わり者扱いされるだろう。
このカードを発行する本社が業容拡張策をとり融資機能を拡充してバンバン「Suicaポイント」を国民に融資していっても、国家は文句を言う筋合いはない。
既存通貨を1兆円も持っていれば(持っていなければどこかから借りてくるか大勢が出し合えばいい)「Suicaポイント」を10倍の10兆円くらい平気で貸し付けても事業経営は問題なく回っていくだろう。そして自分で発行した「Suicaポイント」に対して金利を取っていくことだろう。借りた人はいつでも既存通貨と同等の買い物やサービスを受けられるのだから不満の持ちようがない。年に5%や10%の金利を取っても便利さも相俟って文句を言わずに既存通貨で返済していくと思われる。
やがて融資が10兆円だといくら頑張っても金利収益が7000億にしかならとする状況がつづくと面白くない。だから今後は学費の支払いから、海外旅行、車の購入にも融資していこう…、面倒だから家の購入まで貸してしまえとなっていくと融資残高も順調に拡大して20兆まで数年、もう一息30兆までまた数年となってゆき、数十年後には融資残高100兆円だの200兆円だのという規模に膨らんでいく。
このような経緯を経て国家がそもそも発行していない通貨量によって経済が回ってゆく信用創造経済の新世界まで昇りつめてゆくことになる。そして、実質的にどっちが正規の通貨だか分からなくなっていく。
テンプル騎士団が作り上げたものの本質、その後の世界の歴史で本格的な金融事業となってゆく「信用創造」とはこういうものであったことだろう。
この構造を考えると、旧JR本社は通貨発行権など持っていなくても、いくらでも「Suicaポイント」で融資規模を拡大して既存通貨を我が物としてゆくことができる。
やがて「Suicaポイント」が量的に既存通貨量を圧倒するようになると、国家に圧をかけて「Suicaポイント」を正規の通貨として承認させ、中央銀行を開設させ、「Suicaカード」以外の組織から通貨発行を禁止して取り上げることになる。
これが、17世紀にゴールドスミスノートが紙幣となり(ここで例えとした「Suicaポイント」)、19~20世紀にロスチャイルド銀行が欧米で中央銀行制度を完成させていく過程と考えていきたい(実際はまず既存の中央銀行たるイングランド銀行を乗っ取りやがて1913年にアメリカでFRBを開設しっていくことになる)。